7月10日公開
映画「海辺の一日」

映画「海辺の一日」の情報を受け取る

映画『海辺の一日 4Kレストア版』 まるで世界が僕の傍で甦るかのようだ―― エドワード・ヤン、その原点。

1983年に発表された『海辺の一日』は、エドワード・ヤンの初の劇場用長編映画であり、同時に撮影監督クリストファー・ドイルの長編デビュー作としても知られる記念碑的作品である。この奇跡のようなデビュー作でヤンは、のちの『恐怖分子』『牯嶺街少年殺人事件』『ヤンヤン 夏の想い出』へと連なる主題――都市の変貌、世代間の断絶、家族の軋み、そして個人の記憶が現在をどう規定するか――を、すでに鮮やかなかたちで提示していた。 物語は、久々に再会した二人の女性の会話から始まる。そこから十三年の歳月をさかのぼり、記憶の奥へと幾重にも潜っていく構成は、単なる回想劇ではない。『海辺の一日』が特異なのは、出来事を順に説明するのではなく、ひとりの女性の意識と記憶の流れに沿って、過去が波のように立ち返ってくる点にある。現在の会話をきっかけに、少女時代、恋愛、結婚、そして失踪した夫をめぐる記憶が呼び戻され、ひとつの人生が幾重もの時間の層として立ち上がっていく。そうした意味で本作は、エドワード・ヤン初期におけるきわめて成熟した“意識流”映画とでも呼べるものである。 ヤンは、現在と過去、複数の視点、そして語られなかった感情を精密に編み込みながら、一人の女性の人生を通して、急速に近代化していく台湾社会のひずみを浮かび上がらせる。恋愛と結婚の物語として始まりながら、やがてそれは、父権的な秩序のなかで「自分の人生を生きる」とは何かを問い返す、静かで鋭いドラマへと変貌していく。台湾ニューシネマの胎動を告げたこのデビュー作には、後年のヤン映画を決定づける時間感覚と感情の強度が、すでに刻まれている。



STORY

佳莉(ジャーリィ)は、小さな町の医師の娘として、親への服従を重んじる伝統的な価値観のもとで育った。父の権威に逆らえず、愛を失っていく兄・佳森(ジャーセン)の姿は、彼女に深い衝撃を与える。やがて佳莉は、父が望む結婚を拒み、同級生の徳偉(ドゥウェイ)との結婚を選んで家を出る。 一方、佳森の元恋人である蔚青(ウェイチン)は、留学先のオーストリアから帰国した才能あるピアニストとして活躍していた。佳莉の自由な決断に憧れを抱いていた彼女だったが、佳莉の結婚生活は、次第に理想とかけ離れたものになっていく。 ある日、佳莉は警察に呼び出され、海辺へ向かうことになる。そこで彼女は、夫との歳月、自分が選んできた人生、そして見ないふりをしてきた感情と向き合い始める。過去をたどるなかで、彼女の中に封じ込められていた時間が、少しずつ姿を現していく。



1件の結果を表示中